TCFD提言への取り組み
建設業は施工時の資材投入、建物運用時のエネルギー使用、解体時の廃棄物の排出などさまざまな環境への影響を与える業種であり、当社としても地球環境問題への対応を経営のマテリアリティ(重要課題)の一つと認識しています。
これらのうち重要なテーマの一つである気候変動への対応については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき気候変動による事業への影響を分析し、それらに適切に対処するために取り組むとともに、情報開示を進めています。
持続可能な社会の実現に向け、これらの取り組みを今後より一層充実させてまいります。
ガバナンス・リスク管理
当社では、気候変動対応への取り組みに対応するため、「サステナビリティ委員会」を設置しています。
サステナビリティ委員会は、執行役員を委員長として関係各部門が参画する全社横断的な組織で、気候関連リスク・機会の評価・マネジメントを含む気候関連事項全般について検討を行います。重要事項は執行役員会議及び取締役会に付議・報告し、必要に応じて指示・助言を受け、取り組みに反映させていきます。

戦略
シナリオ分析の前提条件・進め方
TCFD提言では、2℃以下シナリオを含む複数のシナリオに基づく検討を行うことを求めています。当社の主要な事業について、TCFDプロジェクトチーム(サステナビリティ委員会)にて関係部門が参画し、気候関連リスク・機会を特定し、外部シナリオを用いて2030年時点を想定した事業インパクトを分析し、対応策を検討しました。
- 対象範囲
- 東光電気工事株式会社における内線工事業、再エネ事業、送電線工事業、空調衛生工事業、不動産事業、発電事業、交通工事、その他新規開発案件
- 対象時間軸
- 2030年
- 主な参照
シナリオ - 2℃シナリオ...IEA APS(Announced Pledges Scenario)、IPCC RCP2.6
4℃シナリオ...IEA STEPS(Stated Policies Scenario)、IPCC RCP8.5


右下の矢印ボタンを押すと、シナリオの説明あり・なしを切り替えることができます。


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対象事業における気候関連リスク・機会を抽出し、事業への影響の大きさと発生の可能性から重要度を評価し、重要度の高いものを当社としての重要なリスク・機会と決定しました。
この重要なリスク・機会について、事業へのインパクト(財務的影響額等)を分析し、影響が大きいものから優先的にその対応策の方向性を検討しました。

重要なリスク・機会と主な対応策
種類 | 内容 | 自社への影響 | 影響度 | 時期 | 主な対応策 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2℃ | 4℃ | ||||||
重要な機会 | 製品・サービス | GXによる電源構成の変化 (再エネ電力の需要増加) |
再エネ発電所関連工事の受注増加 | 大 | 小 | 短中期 | 再エネ事業戦略の強化(営業活動・要員計画等) |
グリーン電源へのシフトによって再エネ電力の需要増加 | 大 | 小 | 中長期 | 新規再エネ発電所の設置、卒FIT後の再エネ発電所の新規需要家への販路拡大、水素発電等の新規事業分野への投資 | |||
再エネ電力供給量増加に対応した送電網増強工事の需要増加 | 大 | 中 | 中長期 | DXの浸透による工事の効率化、施工体制増強 | |||
市場環境及び顧客行動の変化 | 既存建物の省エネ化、ZEB化を含む関連工事の需要増加 | 中 | 小 | 短中期 | 電気空調衛生一括受注による建物の環境性能向上のための提案力強化 | ||
顧客需要の変化による高環境性能物件へのシフト | 中 | 小 | 中長期 | 収益不動産物件の省エネ化・ZEB化 | |||
モーダルシフト | 次世代交通インフラの受注増加 | 中 | 小 | 中長期 | 営業活動・要員計画の強化 | ||
レジリエンス | 防災・減災需要の増加 | 防災・減災に向けたインフラ整備、修繕工事の受注増加 | 小 | 中 | 中長期 | メーカー・代理店からの積極的な情報収集・社内関連部署への情報展開 | |
屋外機器の耐熱仕様化、BCP関連需要の増加 | 中 | 大 | 中長期 | 顧客との対話を通じてニーズを把握し、戦略的な設備更新提案の実施 | |||
災害復旧 | 災害発生に伴う復旧貢献 | 小 | 大 | 中長期 | 災害復旧対応のノウハウ蓄積 |
種類 | 内容 | 自社への影響 | 影響度 | 時期 | 主な対応策 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2℃ | 4℃ | |||||||
重要なリスク | 移行 | 政策・ 法規制 |
炭素税導入 | 炭素税導入によるコスト負担増加 | 中 | 小 | 中長期 |
Scope1:PHEV・EV・HVへの切り替え、カーボンオフセット
Scope2:再エネ電源への切り替え、非化石証書購入
|
技術 | 自動車の 脱炭素化 |
EV車導入によるコスト負担 (急速充電器等) |
小 | 小 | 中長期 | 一括発注によるコスト引き下げ | ||
市場 | 製品の 脱炭素化 |
環境配慮材料の使用によるコスト増加 | 小 | 小 | 中長期 | 顧客への働きかけ強化 | ||
労働環境の 悪化 |
人員不足による受注機会の損失 | 大 | 大 | 短中期 | 熱中症予防の強化と作業環境の向上、採用力強化 | |||
物理 | 急性 | 激甚災害の 増加 |
自社保有資産(工具等)の損失 | 中 | 大 | 短中期 | 梅雨時や台風シーズンなど洪水が起こりやすい時期に災害ネット(危機管理情報共有システム)で注意喚起 | |
激甚災害増加による収益不動産の浸水・損壊 | 中 | 大 | 短中期 | 止水板の導入等浸水対策の実施、各種防災対策の強化 | ||||
太陽光・風力発電所の設備損壊、復旧費用の発生 | 中 | 大 | 短中期 | リスク管理の強化 | ||||
設備故障等による売電補償 | 中 | 大 | 短中期 | シナリオに基づいたリスク管理及び顧客の合意 | ||||
資材倉庫の被災、輸送遅延による代替材確保 | 中 | 大 | 短中期 | サプライチェーンの強化 | ||||
平均気温上昇 | 空調コストの増加 | 中 | 大 | 短中期 | 省エネ化の推進、断熱性向上、高効率空調への転換 | |||
慢性 | 労働環境悪化に起因した作業員不足による社員人件費・外注費の増加 | 小 | 中 | 中長期 | 施工体制強化、外注先や協力会社の人材採用協力 | |||
猛暑日増加に伴う 作業員の生産性低下 |
小 | 中 | 中長期 | 熱中症予防の強化と作業環境の向上 |
シナリオ分析結果と対応策
シナリオ分析の結果、機会は政府のエネルギー政策による再エネ関連工事の拡大、送電網増強工事の需要増加、モーダルシフトによる次世代交通インフラの受注増加、防災・減災・災害復旧工事等での社会貢献のインパクトが大きい結果となりました。
対応策として、再エネ事業戦略の見直しや提案力強化、収益不動産物件の省エネ化・ZEB化、長期目線での人材獲得・教育研修の必要性が認識されました。
リスクは、炭素税・EVなど環境対策とコスト増加、災害激甚化による保有資産(収益不動産物件含む)の損失・補償、酷暑による労働環境悪化・生産性低下とその対策などのインパクトが大きい結果となりました。
対応策としては保有施設におけるレジリエンス強化、労働環境改革・現場魅力向上、顧客との合意・機能分散などリスク管理の必要性が認識されました。


今後は、シナリオ分析の対象範囲の拡大(対象事業の拡大、連結グループ全体への拡大)を行うとともに、シナリオ分析の結果について、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた移行計画(ロードマップ)の策定や次期中期計画に反映できるよう、具体的な検討を進めています。
指標と目標
温室効果ガス排出量削減目標と削減実績
事業活動に伴うGHG排出量(Scope1,2を対象)を、2030年度までに2021年度比40%削減、
2050年度までにカーボンニュートラルの実現を目指します。
Scope3におけるGHG排出量削減については、サプライヤーとの連携を強化して削減に努めます。

当社における温室効果ガス削減目標
基準年度 | 対象 | 2030年 | 2050年 |
---|---|---|---|
2021年度 | 東光電気工事単体 Scope1、Scope2 |
▲40% | カーボンニュートラル |
開示対象範囲の拡大に向け取り組んでまいります。
当社における温室効果ガス削減実績 (単位:t-CO₂)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
Scope1 | 1,672 | 1,104 | 1,455 |
Scope2 | 3,363 | 3,247 | 1,665 |
合計排出量 | 5,035 | 4,351 | 3,110 |
削減率 | 0 | ▲ 13.6% | ▲ 38.3% |
今後はScope3を含めた開示対象範囲の拡大に向け取り組んでまいります。
- ※各Scopeの説明は以下の通りです。
Scope1:事業者自ら直接排出する温室効果ガス(自動車、ボイラ、冷温水発生機等)
Scope2:他社から供給を受けた電気、熱等の使用に伴う間接的に排出する温室効果ガス
Scope3:Scope1、Scope2以外の温室効果ガス間接排出(事業活動に伴う他社の排出分)
削減施策
具体的な削減対策は次のとおりです。
- (1)
環境付加価値証書の活用
- 一般電気事業者の再エネメニューへの切替
- 自社が保有している再エネ発電所をトラッキングした非化石証書購入によるオフセット
- (2)再エネ電源新規開発の推進
- (3)現場事務所等のLED化推進
- (4)長期に使用する工事現場事務所のZEB化を検討
- (5)燃料促進剤(KS-1)の採用
- (6)保有不動産改修時の省エネ化、建替え時のZEB化を推進
- (7)PHEV車、EV車、HV車への切り替え推進